現在、世界中で麻疹の感染が急拡大しています。
2024年には世界全体で約40万件の症例が報告され、2025年に入ってもその勢いは衰えていません。
1. 麻疹の正体:驚異的な感染力と症状
麻疹は極めて感染力が強く、1人の患者から12〜18人に感染を広げます 。
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初期症状(前駆期): 感染から10〜14日後、高熱とともに「3つのC」と呼ばれる咳(Cough)、鼻水(Coryza)、結膜炎(Conjunctivitis)が現れます。
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コプリック斑: 発疹が出る直前に、口の粘膜に小さな白い斑点(コプリック斑)が現れるのが特徴です。
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発疹: 熱が出てから2〜4日後、顔から始まり全身へと広がる赤い発疹が現れます。
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感染期間: 発疹が出る4日前から出た後の4日間は、周囲にウイルスを感染させる可能性があります。
2. 見過ごせない深刻な合併症
麻疹は単なる「子供の病気」ではありません。
全症例の約30%で合併症が発生し、入院が必要になるケースも多く見られます。
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主な合併症: 下痢、肺炎、中耳炎など。
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重篤なリスク: 脳炎(1000人に1人)や、回復後数年から10年経ってから発症し死に至る「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という恐ろしい病気も存在します。
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免疫抑制(免疫健忘): 麻疹ウイルスはリンパ球を攻撃し、感染後最大1年にわたって他の感染症にかかりやすい状態(免疫健忘)を引き起こします。
3. ワクチンこそが唯一の防波堤
麻疹には特効薬(抗ウイルス薬)がありません 。そのため、ワクチンによる予防が極めて重要です。
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95%の壁: 地域社会での流行を防ぐには、2回のワクチン接種率を95%以上に維持する必要があります。
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現在の危機: パンデミックによる接種機会の喪失や、ワクチンへの不信感(ワクチンヘジタンシー)により、多くの地域でこの基準を下回っています。
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曝露後の対策: もし感染者に接触してしまった場合、72時間以内のワクチン接種、あるいは特定の条件下では6日以内の免疫グロブリン投与により、発症を抑えられる可能性があります。
4. 2025年の新たな課題
最新の研究では、いくつかの新しいリスクが指摘されています。
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乳児のリスク増大: 母親からの「移行抗体」がこれまで考えられていたよりも早く(生後3〜4ヶ月頃)消失しており、ワクチン未接種の乳児が非常に脆弱な状態にあります。
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大人の免疫低下: 過去にワクチンを1回しか受けていない世代や、時間の経過とともに免疫が低下した大人での「ブレイクスルー感染」も報告されています。
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ビタミンAの重要性: 麻疹患者へのビタミンA投与は、合併症や死亡率を大幅に下げることが確認されており、現在すべての患者に推奨されています。
結論:未来を守るために
現在、麻疹の制御状況は「暗い」と言わざるを得ません。
しかし、ワクチンが極めて安全で効果的であるという事実は変わりません。
自分自身と大切な家族、そして地域社会を守るために、改めて母子手帳を確認し、必要な接種を完了させることが今、何よりも求められています。