総合診療内科 診療科

MKSAP17

はじめに;MKSAPとは

勤務先でMKSAPをやっているのを見たので、たまにはと思いやってみました。

MKSAPとは、ミクサップとか、エムケイエスエーピーなどと呼ばれています。

たまに、エムケイサップと呼ぶ人もいますが、稀だと思います。

MKSAPとは、一言で言えば、米国内科学会の問題集といった位置づけです。

症例ベースで、内科の各領域の問題がたくさんあります。

目指せ100点ですが、結構というかかなり難しいです。

とくに、日本と米国の違いもありますので、それらの違いを知ることも面白いと思います。

テキスト自体は、オンラインで9万円くらいするようです。

せっかく購入したのであれば、積極的に活用しなければ、ですね。

~MKSAP~

病歴

42歳の女性

一過性の意識消失のエピソードのため救急外来へ来院。

2時間前、彼女は食料品店で列に並んでいた。

その際、体が温かくなり、顔が赤くなり、吐き気を感じるようになった。

約1分後、彼女は地面に落ちた後、彼女のビジョンは "灰色 "でふらついたことを覚えています。

彼女はすぐに意識を取り戻し、後遺症はありませんでした。

胸痛、動悸、吐き気、しびれ、しびれ、脱力感、めまい、頭痛もありませんでした。

明らかな痙攣活動や腸・膀胱失禁も認めませんでした。

身体検査では、体温は36.8℃、血圧は仰臥位110/80mmHg,立位102/78mmHg,脈拍数は仰臥位78/分,立位88/分,呼吸数は14/分でした。

BMIは28でした。

呼吸音は明瞭で、心雑音もありませんでした。

その他の一般内科的な診察には目立った異常も認めず、神経学的検査は正常でした。

臨床検査の結果、ヘモグロビン値は13.2g/dL、妊娠検査は陰性でした。

次に行う診断検査として最も適切なのはどれか

  • 心エコー図検査
  • 12誘導心電図検査
  • 頭部CT
  • 検査不要

Key point

起立性バイタルサインの測定を含む慎重な病歴・身体検査に加えて、失神のあるすべての患者に心電図検査を行うべきである

サマリー;私見

まず、意識消失を示唆する病歴がある場合は、痙攣なのか失神なのかを判断する必要があります。

これは検査でわかるものではありませんので、病歴が重要です。

そのため、目撃者がいた場合は病院に来て頂いて、詳しい病歴を聴取したほうが良いです。

とはいえ、食料品店で倒れた場合、他人であることが多く、病院に来てくれる人はいないと思います。

よって、救急隊員に詳しく病歴を聴取してもらい、痙攣があったのかなどを救急隊員から聴取することが必要です。

痙攣か失神か

血液検査で痙攣なのか失神なのか見分けるには、乳酸値・アンモニア・プロラクチンなどが有用とされています。

身体所見では、片側の舌咬傷があれば高い特異度をもって、痙攣があったことを示唆します。

ちなみに、低血糖や心停止でも痙攣は起こります

失神が起きた状態が、例えばトイレ中の座位であれば、Presycopal seizureなどの状態も考慮する必要があります。

通常失神は、脳の虚血により生じますので、床に倒れればすぐに元通りになります。

しかし、臥位になれない状況では、脳の虚血が継続したことで、痙攣を生じる場合があります。

と、救急医の坂本先生が仰っていたと思います。

Post ictal state

病歴では、てんかんに伴う痙攣の場合は、Post ictal stateという状態になります。

失神の場合は、通常意識消失から少なくとも1分以内には、元通りになります。

てんかんに伴う痙攣の場合は、意識消失から回復まで時間がかかります。

意識消失直後に病院搬送されても、最初変なことを言っていたけど、徐々にまともになってきたというような状況です。

そのあたりの病歴が重要ですので、痙攣の可能性がある場合は救急隊員に現場での意識の状態を詳しく聞く必要があります。

てんかん

てんかんの診断は極めて難しいです。

少なくとも、繰り返す痙攣の病歴が必要になりますので、初回の痙攣でてんかんと診断されることはありません

また、てんかんと痙攣は全く別物です。

時に混同している方がいらっしゃいますが、てんかんは診断名、痙攣は症候名になります。

そのため、痙攣が起きているのをみて、「エピってる」という人がいますが、全く間違いということになります。

このあたりは、そういう意図で「エピってる」を使っているわけではないと思いますが、基本的には正しい用語を用いないと、痙攣の原因がてんかんであると思われてしまいます。

余談ですが、痙攣のないてんかん(NCSE)という病態もあります。

最も多い失神の原因

神経調節性失神が最も多いです。

よく例えられるのが、校長先生の長い話し中に倒れてしまう、あれです。

きちんと診断するには、Tiltテストというものを行います。

Tiltテストは、立位の状態で30分程度モニタリングされる検査で、失神を誘発させる検査になります。

~Tilt test; 慶応大学~

このページでは、検査は1時間ほどと書かれています。

CHESS

失神の際には、とにかくこのCHESSに該当するかどうかは少なくとも見ておく必要があります。

- うっ血性心不全
- ヘマトクリット<30%
- 心電図異常
- 息切れ
- 収縮期血圧<90mmHg

この5項目の頭文字になります。

~CHESS;桂病院~

CHESSの項目は忘れがちですので、調べるといつもこの桂病院のホームページを拝見させていただいています。

本症例のまとめ

  • 経介在性失神(反射性失神)を起こした可能性が高く、心電図検査を受けるべき
  • 神経介在性失神は失神の最も一般的な原因
  • 吐き気、体温、ふらつきなどの迷走神経前駆症状を伴う
  • 失神の患者には、慎重な病歴および身体検査(起立性血圧および脈拍測定を含む)に加えて、12誘導心電図(ECG)が推奨される
  • 心電図が正常であれば、重篤な有害転帰の陰性予測値が高い
  • 血管迷走性失神の症状があり、心臓病歴がなく、起立性バイタルサインを含む身体検査が正常で、心電図が正常であれば、外来での経過観察で安全に退院することができる
  • 構造的な心臓病を示唆する既往歴や臨床所見がない限り、失神の初期評価の一環として心エコー検査は推奨されない
  • 脳血管疾患は失神のまれな原因であり、CTやMRIを用いた脳画像検査を推奨されない

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