導入の目的
当院救急外来における医師の過重労働による情報伝達(指示系統)の不足やERでの診療全体における補助を担うべく、診療看護師(NP)へのタスク・シフティングを通じて、ER全体の運営効率と収益性の最大化を目指します.
導入コストの比較(年間ベース)
医師1名を増員する場合と、NP1名を導入する場合の直接的な人件費の差額を以下の通り算出しました.
表1:人件費比較表
|
項目 |
医師 (1名) |
NP (1名) |
差額 (削減効果) |
|
推定年収 |
1,800万円 |
800万円 |
1,000万円 |
|
月額給与 |
150万円 |
66.6万円 |
83.4万円 |
|
法定福利費等 (約15%) |
270万円 |
120万円 |
150万円 |
|
合計コスト |
2,070万円 |
920万円 |
1,150万円 |
経営的判断: NP1名を導入することで、医師1名を雇用する場合と比較し、年間で約1,150万円の固定費抑制が可能です.
ER生産性シミュレーション
NPが内科系医師業務の80%を代行することで、医師が「より高度な判断が必要な業務(主訴の最終診断、手術判断等)」に集中できる時間を算出します.
医師1名あたりの「患者対応可能件数」向上率
理論上、医師の業務時間は「NPが代行可能な周辺業務(80%)」と「医師のみが実施可能な核心業務(20%)」に分かれます.
- 現状: 医師1名が100の力で10人の患者を診ている
- 導入後: 医師は各患者の核心業務(20%分)のみを担当。周辺業務(80%分)はNPが実施
- 計算式: 医師が1人の患者に割く時間が 1/5 に短縮されるため、理論上の対応可能件数は最大で5倍(500%)となりますが、実際には指示・指導の時間(20%程度と仮定)が必要です
医師の純粋な業務負担 = 20%(核心業務) + 20%(NPへの指導・指示) = 40%
この場合、医師1名あたりの患者対応件数は2.5倍(150%向上)が見込まれます.
定性的メリットの整理
- 医師のバーンアウト防止とリテンション
- カルテ入力や処方代行などの事務的・定型的業務から解放されることで、医師の労働時間が短縮し、メンタルヘルス向上に寄与します.
- 救急車応需率の向上
- 初診時の病歴聴取やAライン確保等の手技をNPが先行して行うことで、患者の滞在時間が短縮。ベッド回転率が上がり、より多くの救急車を受け入れる体制が整います.
- 医療安全の確保と質の向上
- 看護師としての視点(ケア)と、医学的知識(キュア)を併せ持つNPが介在することで、医師の指示漏れや見落としを防ぐダブルチェック機能が強化されます.
リスク・課題と対策
|
課題項目 |
内容とリスク |
対策案 |
|
指示命令系統 |
現場での指揮命令が複雑化し、指示の遅延が生じる恐れ。 |
NPのプロトコル(包括的指示)を整備し、介入範囲を明確化する。 |
|
教育コスト |
導入初期は医師による指導に時間を要し、一時的に生産性が低下。 |
初期3ヶ月を研修期間とし、段階的に代行業務範囲を拡大する。 |
|
法的責任 |
医事紛争時、指示を出した医師と実施したNPの責任所在が懸念。 |
病院賠償責任保険への加入確認と、院内規定での責任範囲の明文化。 |
結論
NPの導入は、医師増員と比較して年間1,000万円以上のコストメリットとなる可能性.
加えて医師の生産性を大幅に向上させ、ER全体の増収(救急件数増)に寄与する可能性が高くなる可能性.
1名のトライアル導入前に看護師の負担,医師の負担を抽出し評価,一般的な評価指標としてはERでの滞在時間短縮が可能となれば,医師の残業時間削減などにも寄与するものと推測されます.
ただし救急車応需の増加が担保できれければ,人件費のほうが掛かる可能性もある.