はじめに
カンファレンスに参加したので、その復習を兼ねて記事を書いています。
各診療科で、カンファレンスの特徴は様々です。
例えば、ざっくりと臓器横断的な診療科と、臓器特異的な診療科に分類されます。
臓器横断的な診療科は、集中治療、総合診療、麻酔、救急、病理、放射線などが代表的でしょうか。
臓器特異的んか診療科は、いわゆる一般的な、呼吸器とか循環器といった診療科になります。
臓器横断的な診療科は比較的どの診療科でも、親和性があります。
当然ですが、親和性があるとはいえ、書く専門のエキスパートですので、カンファレンスで話し合う内容も異なります。
例えば、集中治療と総合診療は比較的似たような診療科です。
カンファレンスの特徴としては、集中治療の場合は、診療科名に「治療」が入るほど、比較的治療に特化した診療科といえます。
ざっくりと、多臓器不全診療科といってよいかもしれません。
一方、総合診療の場合は、治療というよりは「診断」の方がどちらかといえば得意かもしれません。
当然ですが、適切な診断のもとに適切な治療が行われます。
ということは、集中治療も診断は必要ですし、総合診療も治療のスキルは当然必要になります。
今回は、総合診療のカンファレンスに参加しました。
結論からいえば、診断名は帯状疱疹です。
見れば分かる疾患ですが、看護師の思考を少し紹介します。
診断
看護師は、通常診断は行いません。
けれども、無意識のうちに診断を行っています。
たとえば、悪寒戦慄を伴う発熱を主訴という事前情報がある場合は、血液培養をはじめとした準備を看護師さんが勝手に行います。
これは、医師にいわれたからではなく、パターンで行っている場合が多いです。
パターンというと、聞こえが悪いですが、立派な診断戦略の1つです。
パターン
パターンの特徴をあげると、これがあるからこれ、というやつです。
風邪はウイルスですので、比較的全身の症状がでます。
風邪の診断には、鼻汁、咽頭痛、咳などの症状があることが特徴です。
これらに、背景情報としての、周囲の流行状況等を加味して、風邪(普通感冒)の診断に至ります。
普通の風邪はたいてい普通の風邪です。
困るのが、風邪症状と似た他の病気の場合です。
例えば、咽頭炎などはその代表かもしれません。
咽頭痛があるから、風邪と診断していると、診断が間違っている事になりかねません。
この場合は、咽頭痛はあるけど、鼻汁や咳がないといった、喉だけの症状であることに注目します。
じゃあ、細菌性咽頭炎の可能性もあるね、と考えます。
そのように考えたら(代替診断)、その診断の確からしさを検証します。
論理的推論
代替診断の可能性を考える場合は、パターンとは異なるアプローチが必要になります。
論理的推論といって、考えている診断の上げ下げを病歴や検査から行います。
先に挙げた、急性細菌性咽頭炎の場合は、CentorやMcisaacといった、スコアリングを行い可能性があれば、迅速検査を行います。
迅速検査の感度は高いですので、検査により大きく方針が変わる有用な検査といえます。
ただし、病歴が重要ですので、病歴でCentor4点で迅速検査が陰性の場合に治療をしないかと言われれば、そればそのときの状況によります。
とくに近年は、細菌性咽頭炎の原因菌にFusobacteriumなどの嫌気性菌の関与が示唆されています。
嫌気性菌は、培養が難しいのであまり認識されて来なかったのだと感じています。
この様な、大きく2つの診断アプローチがあります。
総合診療でご高名な、志水太郎先生が提唱されているものは、これらをSystem1とSystem2と呼んでいます。
加えて患者による診断(ヒント)を、Sytem3と呼ばれています。
帯状疱疹
今回の主訴は、3日前からのみぎ側腹部痛の60歳代女性でした。
結論から言えば、「痛いとことはまず見る」これに尽きると思います。
例えば、今回はカンファレンスなので、みぎ側腹部に関する診断や論理的思考を踏まえて、診断の可能性を上げ下げします。
そんな事をしなくても、まず痛いところを見れば、それで診断確定です。
例えば、病歴を詳しく聞くことはとても大切な事ですが、特に忙しい状況では「直接みる」ことはとても大事ですし、診断のスピードを上げることにも繋がります。
いわゆる直感の診断である、System1というものになります。
診断エラー
診断エラーは、恥ずかしいものでもなければ罵倒されるものでもありません。
絶対に診断エラーは起こります。
そのエラーを致命的にしないための方略が必要になります。
医療安全とも繋がりますが、どこかで気づいて修正することで、致命的なエラーを防ぐことが可能になります。
ある診断エラー
片側背部痛で来院された高齢女性です。
身体所見では、肋骨脊柱角の叩打痛を認めました。
その日は多忙でしたので、少しでも患者さんをさばく必要がありました。
直感(パターン)での診断では、尿路感染となりました。
その結果、泌尿器科に紹介状を記載したところ、帯状疱疹でしたと紹介状の返書が届いたそうです。
忙しいときこそ、基本に忠実にということだと思います。
まとめ
痛いところは、見ることでスナップショット診断が可能になる可能性もある
帯状疱疹は何でもありなので、皮疹がなくてもあり得る
後医は名医ではなく、どこかでエラーを拾うシステム構築が重要