結論
ニューモシスチス肺炎は,PJPと略すのが本来は正しいが,臨床的にはどちらでも通じることが多い
HIV-PJPに関する報告が多いが,免疫脆弱性のある場合はNon HIV-PJPも鑑別に含める必要がある
PJPは気管支肺胞洗浄(BAL)を含む喀痰PCRの結果や,β-D-グルカン(βDG)の上昇,画像,病歴などが診断のポイント
治療薬の基本はST合剤だが,副作用やアレルギーの場合もありContingency Planは考えておく
背景
以前は,カリニ肺炎と呼ばれていました.
そのため,Pneumocystis carinii pneumoniaとして,PCPと呼ばれていました.
現在では,Pneumocystis jirovecii pneumoniaですが,都合の良い用に頭文字をとってPCPと呼ばれています.
実際には,Pneumocystis jirovecii pneumoniaのため,PJPと略すのが正しいようです.
Up to dateにもそのように記載されていました.
Pneumocystis jirovecii感染症は通常肺に感染し,他臓器への感染は稀とされています.
肺以外では,リンパ節,脾臓,肝臓,骨髄,小腸などが感染しやすい臓器とされています.
臨床症状
労作時の酸素化低下が特徴的とされています.
CD4が高いHIV感染者で,PJPを見た場合は免疫再構築症候群(IRIS)をを迅速に考慮すべきとされています.
CT所見では,びまん性微小結節影,斑状すりガラス影,対称性・非対称の不透過像,網状影,隔壁の肥厚,コンソリデーションなどが特徴的とされています.
診断
有用な検査はありません.
気管支肺胞洗浄(BAL)検体の提出が,最も感度・特異度が高いとされています.
仮に培養結果が陰性の場合でも,除外をすることは困難です.
すなわち,診断には適切なBAL検体が必要ということになります.
他にはβ-D-グルカン(BDG)が感度と輝度が高いことが知られていますが,あくまでも補助的に用いるべきとされています.
治療
ST合剤が基本になります.
15-20mg/kg/dを3回に分けて,14-21日間行われます.
通常は,ステロイドが使用されます.
メチルプレドニゾロンを1−5病日に40mgを1日2回行います.
その後は,6−10病日は1日1回,11-21病日は20mgを1日1回行います.
代替薬
サルファ剤にアレルギーがある場合は,アトバコン,ペンタミジン,クリンダマイシン+プリマキン,ダプソン(dapson)が用いされます.
dapsonは通常trimethoprimかpyrimethamine, leucovorinと併用で用いられます.
重症のPJPの場合は,少量から漸増する「脱感作」も選択肢の1つです.
いずれにせよ,ST合剤をいかに継続できるかが治療の基本になります.
代替薬の場合は,PJPの重症度が比較的軽症もしくは,看過できない副作用が生じた場合になると思われます.
例えば血球減少や肝酵素上昇などはよくある副作用になりますので,併用している他の薬剤の中止を含め,慎重に協議する必要があると思われます.
他にも腎機能障害や血性カリウム上昇などは有名な副作用になりますが,これらの認識された副作用に対しては比較的対処方法がありますので,適切に認識することが必要かと思います.