結論
- 可能な限り制限すべき
- ただし、Volume statusの問題は難しい
制限輸液
輸液を制限する戦略は、近年集中治療の領域ではよく行われています。
代表は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する戦略があります。
肺に水が溜まって心臓が原因の肺水腫場合、利尿剤を用いてVolume reductionを行います。
これは、非心原性肺水腫であるARDSの場合でも有用と言われています。
これは、2006年の有名な研究である、FACCT研究でも示唆されています。
観察研究も多数あり、近年重症患者に対し積極的な輸液を行うことはだいぶ減ってきました。
早期目標思考型戦略(EGDT)
集中治療において、輸液量を増やすきっかけとなった研究が、2000年の有名なEGDTの研究です。
この研究結果は、今でこそ単施設で死亡率が高いなど、様々なリミテーションを伴う研究ですが、当時はものすごく流行しました。
今でいう、アイドルグループのような感じでしょうか?
とにかく、リミテーションのある研究結果を、国際的ガイドラインが全面的に支持し、その結果重症患者に対する輸液量は、国際的に増加していたのでは無いでしょうか。
例えば、中心静脈圧を指標に輸液をしていました。
EGDTのプロトコルでは、CVPが上昇するまで輸液を行い、かつ6時間以内に達成することが目標とされていました。
そのため、世界中でCVPを指標に輸液が行われていた可能性があります。
実際わたしも、施設を移ってからは輸液を大量にしていたのを思い出します。
結果的に、患者さんの予後は不良である傾向にあったように感じます。
もちろん因果は不明です。
そして、この輸液を制限するかどうかということに関しては、現在でもきちんと決着がついているとは言えない状況であると思います。
個人的には、大量輸液全盛の時代に制限輸液の戦略が良いと思っていましたので、時代が追いついてきのたかもしれません(笑)。
腎臓と肺
昔は輸液をすれば腎臓には良いことをしているという風潮がありました。
例えば、腎臓内科医は輸液を勧め、循環器内科医は輸液を制限するといった具合です。
もちろんこのように簡単にいかないのが輸液の世界です。
近年は、腎うっ血という概念もあり、腎臓にとっても輸液をすることが良いこととは言えないということも分かってきました。
そして、大量輸液を行いがちなのは、次善の策として腎代替療法や気管挿管というオプションがあるということも、大量輸液を支持している言い分だったのかもしれません。
当然ですが、気管挿管はしないほうがよいですし、腎代替療法も行わない方が良いです。
REVERSE-AKI
https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-021-06401-6
この研究は、タイトルのようにあくまでもパイロット研究です。
通称、REVERSE-AKIです。
この結果をもって、研究デザインが練られメジャージャーナルに掲載されると思われます。
2001年5月号のIntensive care medicine(ICM)という雑誌に掲載されています。
Deep-Lで翻訳した内容を一部改変してコピペしています。
目的
初期の水分蘇生を受けた急性腎傷害(AKI)の重症患者を対象に、制限的な水分管理戦略を通常のケアと比較した。
方法
この多施設共同フィージビリティー・トライアルでは、ヨーロッパとオーストラリアの7つのICUにおいて、100名のAKI患者を1対1の割合で無作為化した。
輸液制限は、臨床医の判断により、輸液量を最小限に抑え、利尿剤を投与して尿量を増加させることで、1日の体液バランスをマイナスまたはニュートラルにすることを目標とした。
また、臨床的に指示された場合には、輸液を行った。
主要評価項目は、無作為化から72時間後の累積体液量であった。
結果
無作為化から72時間後の累積体液量の平均(SD)は、制限的体液管理群では-1080mL(2003mL)、通常治療群では61mL(3131mL)、平均差(95%CI)は-1148mL(-2200~-96)mL、P=0.033であった。
AKIの期間の中央値[IQR]はそれぞれ2日[1~3]、3日[2~7]であった(中央値の差-1.0[-3.0~0.0]、P=0.071)。
全体として、体液制限管理群では46人中6人(13%)、通常ケア群では50人中15人(30%)が腎代替療法を受けた(RR 0.42、95%CI 0.16-0.91)、P = 0.043。
24時間後および7日後の累積体液バランスは、制限的体液管理群で低かった。
利尿剤の投与量は両群間で差がなかった。有害事象は通常治療群でより多く発生した。
結論
AKI を有する重症患者において、制限的な体液管理レジメンは、通常のケアと比較して累積体液量が少なく、有害事象も少なかった。
この介入の大規模試験は正当化される。
まとめ
- 基本的輸液戦略は、制限的な方向で間違っていないと思われます
- ただし、これらの結果は集中治療医が判断して行っている輸液戦略であり、輸液が必要な場合は当然輸液が必要になります。