結論
- 60点が色んな意味でリーズナブル
- 100点を目指すということは、効率化(生産性)を下げる
60点
60点と聞いて、どのように感じるでしょうか?
60点の所感は様々で、人によっては「まずまず」という人もいれば、「だめだめ」という人もいるでしょう。
60点という数字は、ぎりぎり半数を超えているということで、合格点とするには疑問符がつく数値であるとも言えます。
例えば、医療職の場合は1つのミスが命取りになりかねません。
本来は、このような命に直結する場合の国家資格の場合、100点を取らなければなりません。
けれども、国家試験は当然ですが100点とらなくても合格します。
国家試験のボーダーラインは、もっと高いと思いますが、なぜ赤点と言われる60点が1つのボーダーラインなのでしょうか。
それは、記述式の試験で100点を取れたとしても、臨床的には「使えない」ということもしばしあるでしょう。
例えると、TOEIC800点レベルでも、会話となるとできないという人がいると言われているように、試験と実践は異なるモノです。
KAPのGAPというものがあります。
KAPとは、Knowledge、Attitude、Practiceのことです。
日本語だと、わかる、できる、実践できる、でしょうか。
実践するためには、当然わかる必要がありますが、できる必要もあります。
分かるということは、試験で半分以上のことは分かっているという前提です。
何故試験の点数が60点で良いのかと言うと、リカバリーする術があるからです。
そのリカバリーは、先輩が主に担います。
試験で分かる状態になったとしても、シミュレーターを用いてできる状態になったとしても、実際の患者さんに実践できるためには、通常先人に学ぶ必要があります。
医療の場合は、1つ上の先輩であったり、だいぶ上の先輩であったり、様々です。
60点が1つのカットオフポイントとなっている理由はわかりませんが、平均的に60点を多くの人が超えてくれるような試験を作成するということが、1つの目安なのではないでしょうか。
100点を目指す場合
100点を目指すということは、非効率的です。
わたしの所属する看護部の多くは、100点を目指しているように思います。
組織として重要なことは、「成果」を提示することです。
個人としての能力も必要ではありますが、組織として必要なことは、組織全体としての能力を向上させることが必要になります。
個々人がそれぞれ100点を取れるAチームだけでしたら、マネージャー次第ですが素晴らしい成果を挙げる可能性があります。
Appleの場合、スティーブ・ジョブズはAチームにはAクラスの人材だけを集めたとされています。
これは、腐ったみかん理論と同じです。
腐ったみかんが箱の中に1個あれば、その周りのみかんが腐り、だんだんと箱全体のみかんが腐ってしまうということです。
Aクラスに、Cクラスの人材が入ることで、Aクラスの人材はCクラスのレベルまで思考を落とす必要があります。
Aクラスの人材からすれば、Cクラスの人材に思考を合わせるということは、非効率的です。
余分な時間を使う必要が生じます。
とはいえ、繰り返しますが一般的な組織の場合60点を目指す必要があるのです。
それは、全員100点を目指すことはできないからです。
つまり、60点を全員が取れる組織であり、60点未満の人材は底切りする必要があります。
60点が集まる組織は、束(バンドル)で取りかかる必要があります。
目的を共有し、その結果どこに向かうべきなのかを共有し、その過程を共有することで「成果」は提示することが可能になります。
仮に掲げた目標を達成できない場合は、その結果を更に分析します。
そして、個人が頑張るのではなく、組織として成果を提示できるための「仕組み」を作りあげることが必要なのです。
看護師の場合
看護師は、医師と比較すると基本的知識の側面からは劣っているといえます。
もちろん、医師よりも基礎学力を含めて上回る看護師もいますが、それは少数です。
病院の場合、最も大多数の職業は看護師です。
看護師が多いということは、看護師にとっての「仕組み化」が作れれば病院としての営利を増やすこともできます。
多職種や患者さんにとって、よりより医療を提供することが可能になります。
その国家的戦略の代表が「特定行為」です。
特定行為とは、通称看護師特定行為のことです。
看護師は、常に患者さんの傍にいます。
最もタイムリーに対応できますし、最も今日の患者さんの流れを把握しています。
その看護師に、医学的知識が加われば医師の役割はかなり減るはずです。
そして、自分で仕事の算段を計画できるということは、仕事へのやりがいを得られることへ繋がります。
現在、看護師にとって変革ののタイミングとしては、特定行為を上手に使いこなすことであるといえます。
仕組み化
仕組み化の代表は、プロトコルです。
医師の仕事の8割は、パターンです。
例えば、電解質補正などは、カリウム目標が決まれば、その目標に合わせてカリウムを補充するだけです。
このあたりの仕組み化は米国の場合、非常に上手に行われているように思います。
米国のテキストは、フローチャートが非常に多く書かれています。
一方、日本の場合は職人的なアプローチが多いように思います。
カリウムを補充するだけでも、人によってこのくらい補充するといったようなシチュエーションです。
これは、人によって(腎機能などは当然考慮しますが)カリウムの補充量を変えるということは、まさに職人気質の代表です。
蕎麦職人が毎日天候や湿度などをみて、水の含み具合を変更するということはよく言われています。
そんな事言われても、とても仕組み化を行うことはとても困難です。
この職人的なアプローチは、100点を目指す看護部と同様です。
けれども残念ながら真似することは難しいです。
だから繰り返しますが、仕組み化することが必要になるのです。
スペシフィックな医療における仕組み化は、考えれば色々ありますので、今度考えてみようと思います。
まとめ
- 組織の場合、60点を平均的に取れることが重要
- けれども、多くの職人気質の人は、100点を目指そうとしているので、それは間違い
- 60点の場合、残りの40点をリスクヘッジするには、先人に学ぶことが必要
- 60点平均を目指す場合は、仕組み化で組織としての成果を提示することが必要