看護

【新人看護師向け】ショックの輸液

ショックの4つの分類

  • 心原性
  • 閉塞性
  • 循環血液量減少性
  • 血液分布異常性

ショックは、これらの4つの原因・病態、もしくは複合的に起こります。
例えば、敗血症性ショックであれば、血液分布異常が主病態になりますが、輸液も行います。
そのため、血液分布異常と循環血液量減少性ショックが複合的に生じているといえます。

加えて、敗血症が原因の心機能低下が起こることがあります。
Septic cardiomyopathyと呼ばれるものです。

敗血症では、一般的に心臓の拍出量は増加します。
その状態を、Hyperdynamic stateと呼びます。

酸素運搬における3つの要素

繰り返しになりますが、ショックでは3つの要素を意識することが重要でした。

  • 酸素飽和度
  • 心拍出量
  • ヘモグロビン

この3つを、組織に運搬させることが、敗血症の主な対応になります。
このバランスが崩れることを、酸素需給バランスの破綻と呼んでいます。

すなわち、ショックということです。
組織が酸素不足になると、嫌気性代謝がおこります。
呼んだ字の如く、酸素が不足した状態での代謝のことです。
その代謝産物として、乳酸が上昇します。

乳酸の上昇

乳酸が上昇している(目安は > 2mmol/L)ということは、ショックの可能性があるかもしれないと考えることが必要です。

ただし、乳酸は嫌気性代謝以外でも様々な場所で産生されますし、乳酸上昇=ショックではありません。
たとえば、乳酸のクリアランスも重要です。

普通人間は、全力で活動を起こすと乳酸が蓄積してきて活動が困難になります。
休みながらでないと山登りができなかったり、ということをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
この休んでいるときに、乳酸の産生を抑え、クリアランスすることで活動が再開できるようになります。

乳酸のクリアランスは主に、肝臓でクリアランスされます。
そのため、肝臓が悪い方は乳酸が高値になる方もいます。

肝臓が原因の乳酸上昇を、Type-Bと呼んでいます。
クリアランスの問題ということです。
Type-Aは、通常の乳酸上昇のことです。

余談ですが、低血糖のときには乳酸をエネルギー源とします。
そのため低血糖で、乳酸が上昇している場合には、機能予後が良いという報告もあります。

ショック時の輸液

ショックの場合は、輸液を行います。
主に、細胞外液と呼ばれるものです。
細胞外液とは、血液と似たような成分と理解してもらうとわかりやすいです。

輸液の中に入っているものは、少ないです。
その組成の中心は、Na・K・Clなどの電解質になります。
NaとKは陽イオンです。
Clは陰イオンです。

もう一つ、比較的大きな陰イオン成分があります。
HCO3-と呼ばれるものです。
重炭酸とか、バイカーボネイトとか呼んでいます。

[Na] - [Cl] - [HCO3-] の計算をすると、12くらいになります。
これが、Anion gap(AG)と呼ばれるものになります。

細胞外液の種類

細胞外液には、主に4種類あります。

  • 生理食塩水
  • 乳酸リンゲル
  • 酢酸リンゲル
  • 重炭酸リンゲル

生理食塩水は、少し特殊でNaとClしか入っていません。
特殊というか、生理食塩水が原点で、全てはそこから派生したものになります。

他の3種類の細胞外液は、緩衝(バッファー)物質として何を用いているかという違いです。
乳酸なのか、酢酸なのか、重炭酸なのかということです。
重炭酸が最も生理的ではありますが、例えば輸液による死亡率の違いなどを示した、明確な研究はないようです。

肝臓が悪い人には、乳酸リンゲルはよくない?

そこで、乳酸のクリアランスの話に戻りますが、肝臓が悪い人には乳酸リンゲルはあまり使用しない方が良いという方もいらっしゃいます。
それほど気にする問題でも無いとは思いますが、肝臓が悪くて乳酸が高い人には、乳酸リンゲルよりも酢酸リンゲルや重炭酸リンゲルの方が良いかもしれません。

あくまでも、”かもしれません”程度ですので、基本的には血管内ボリュームの補充目的として好みに応じて、使えばよさそうです。

ただし、生理食塩水は同じ細胞外液でも悪いことがおきます。
NaもClの量も多すぎるのです。
特に、Clは血液中の基準値の約1.5倍入っています。

Clが増えすぎると、NaとClのギャップが縮まることで、アシドーシスになります。

肝臓が悪い人にはアルブミン輸液も検討

ちなみに、肝臓の悪い人にはアルブミンの輸液も検討されます。
アルブミンは、生理学的には1gで約20mlの水分を引きつけるとされています。

通常は、5%か25%の製剤になります。
25%は50ml、5%は250mlです。
つまり、どちらも12.5gのアルブミンが補充されます。

1gあたり20mlの水分をひきつけるということは、1瓶で12.5gですので、250mlの輸液をしたことと同じになります。
そのため、アルブミンは輸液をあまり入れたくない方には検討されます。
ちなみに、肝臓が悪い方以外では積極的にその使用が検討されるものではありません。

輸液の分布

通常、細胞外液は4分の1が血管の中に分布します。
つまり、125mlです。
125mlということは、細胞外液1000mlを輸液したことと同じです。

ただし、この理論はコンパートメントモデルに準拠したものです。
まさに新人看護師さんは知っておくべき事項ですが、エキスパートは必ずしもそのような考え方では無いことには注意が必要です。

まとめ

  • ショックにはまず輸液、ですが心原性の可能性も考慮する必要がある
  • 細胞外液は、4分の1が血管内に分布する(コンパートメントモデル)
  • 肝臓が悪い人には、アルブミンも検討される
    ショックへの対応における、3つの要素を意識する
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