はじめに
レジデントマニュアルシリーズは、過去沢山出ています。
多分最も有名なレジデントマニュアルは、聖路加の「内科レジデントマニュアル」です。
内科レジデントマニュアルは、改訂が進み2020年時点で、第9版が出版されています。
ややマニアック?
多分レジデント向けと表題に書いてあるもので、過去最高クラスにマニアックなタイトルです。
ほかには、青木眞先生の単著(第2版まで)である「感染症レジデントマニュアル」です。
感染症レジデントマニュアルは、とてもレジデント向けではなく、もはや日本のMandell(感染症の最も有名なテキスト)といえる立ち位置ともいえる程、造詣の深いものとなっています。
そして、改訂され続けています。
改定作業は、結構大変ですが医学は常に進歩し続けていますので、良書であり続けるためには、改訂は必須であると言えます。
そもそもレジデントが、不明熱・不明炎症と対峙できるのか
このあたりの、非専門家が診た際に「ふわっとした診断概念」を持つ病気は、経験が無いとなかなか「この病気です」ということは難しいです。
「多分この病気なんだろうけど、専門家の先生どうですかね」というところが関の山です。
非専門家で看護師であるわたしには、ふわっとした診断概念に映るこれらの不明炎症疾患ですが、専門家にとってはきっちり決まった概念があるのでしょう。
不明熱といわれる病気は、専門家が見ればすぐに原因が分かることもあります。
逆に、専門家が診てもわからないこともあります。
レジデントが診るという観点からは、診断が難しいそれらの病気の可能性にたどり着き、診断に迫るという事は決してムダな作業ではありません。
診断の難しい病気を診断するということは、(看護師目線ですが)今後の医師人生において非常に有意義なことであると思います。
ただ、診断はゲームでなく目の前の患者さんは、ときに数年にも渡り診断が難しい病気で苦しんでいるケースもあります。
そのためには、適切な診断があり、適切な診断の上に適切な治療が成り立つという構造です。
診断学は興味深い領域ですが、何よりも難しい病気を診断して治療した結果、患者さんが過去の苦痛から開放された瞬間こそが何よりも嬉しいひとときです。
個人的には、第5章 不明熱にしてはいけない疾患は大事
伝染性単核球症
本書第5章のタイトルのみ引用
HIV感染症
サイトメガロウイルス初感染による伝染性単核球症様症状
亜急性甲状腺炎
腎盂腎炎
胆管炎・胆嚢炎
ウイルス性髄膜炎
マイコプラズマ肺炎
骨盤内炎症性疾患
渡航関連感染症
これらは、比較的よく見る疾患群です。
総合診療や診断学を学んできた方でしたら、これらの疾患の診断は容易です。
ただし、患者さんはよくあるプレゼンテーションを呈するとは限りません。
テキストで学んだ通りの症状を呈するのであれば、AIのほうが能力は高いでしょう。
多様性があるからこそ、現時点では人の診断能力はAIよりも上を行くとされています。
よくある病気を淡々と、確実に診断し治療を行うことこそ、基本に忠実に行うべきです。
例えば、Covid-19の流行当初の診断では、風邪の見方が重要とされていました。
これは、一般論としてインフルエンザしかり、風邪をしっかりと診る事ができれば、その周辺の(ミミック)診断にも周知しているということと同義であると言えます。
10章と付録もオススメ
これらの項目は、特別読まなくても良いと冒頭に書かれています。
ただ、個人的にはここが一番本書で興味深い内容でした。
日数 x CRP > 100の場合は、専門家に聞いてみるということも書かれています。
CRPをこんな使い方したことなかったので、たしかに炎症が長期間長引いているということなので「そうだな」と関心しました。
不明な炎症を不明なままにしないということは、非専門家にとっても重要だと感じました。
編著者の國松先生は、例えば「仮病の見抜き方」などからもわかるように、文章の校正がとても興味をそそられる書き方をされますので、ついつい引き込まれてしまいます。
そのような、國松ワールドとでも言うのでしょうか、この本の本質とは異なる部分に感銘をうけました。
というか、そこが本質のような気がしました。