結論
- 憩室炎後の大腸内視鏡検査は行ったほうが良さそうです
- 大腸癌の検出率は、3%弱程度と見積もった方がよさそうです
憩室炎とは
特に高齢者の腹痛の原因として、比較的よくある病気です。
年齢や個人の特性もあると思いますが、憩室と呼ばれる穴のようなものが、大腸にできます。
個人により多寡はありますが、殆どの方は多少なりとも憩室を持っていると思われます。
単純性と複雑性
憩室炎には、虫垂炎の様に単純性と複雑性に分類されます。
多くは単純性で、外来で経口抗菌薬での加療が可能です。
日本の場合は、軽症でも絶食が必要という理由で、入院することのほうが多い様に思います。
単純性とは、いわゆる憩室の炎症に伴うものです。
一方複雑性とは、穿孔・膿瘍形成・閉塞・瘻孔などの合併をきたしたものとされています。
当然ですが、複雑性の場合は外科コンサルトが必要になります。
ただし、全例が外科的に処置されるわけではありません。
通常、入院・絶食にして、腹痛が良くなれば食事を開始して、1週間ほどで抗菌薬加療は終了します。
その後、大腸内視鏡検査が行われます。
憩室炎での大腸癌罹患率
複雑性の場合は、約9%で大腸癌の合併を来す事がわかっていますので、内視鏡検査を行うことに異論は無い様です。
一方、単純性憩室炎の場合は、大腸癌合併率は少ないようです。
ある、メタ解析では0.6%程度だったようです。
そのため、単純性憩室炎後の大腸内視鏡精査に関しては、議論となっていたようです。
そんな中、今回の研究は内視鏡検査を推奨する結果となっています。
ということで、憩室炎後には大腸内視鏡検査を行ったほうがよい、と憶えておいて良さそうです。
通常、6−8週間後に行われる事が多いようです。
憩室炎後の大腸内視鏡検査に関する大腸癌検出率
背景
ガイドラインでは、憩室炎後の大腸内視鏡検査が推奨されています。
憩室炎は、大腸癌や腺腫の合併が多いとされており、大腸癌を検出・否定する目的に行われます。
方法
2008年1月〜2013年5月にピッツバーグ大学医療センターで、憩室炎のためにCTスキャンを実施された症例を後方視的に検討した。
また、対象症例の診断や治療に関しても、情報が収集された。
今回収集したデータ(N=28,573)と、メタ解析のデータ(N=68,324)を比較検討した。
結果
合計、5167症例がCT検査を思考し、978例が憩室炎の診断となった。
うち474症例(48.5%)が大腸内視鏡検査が行われた。
大腸癌合併は(13/474, 2.7%)とメタ解析の結果(0.8%)と比較し有意に高かった(P<0.0001)。
腺腫合併は対象群4%、メタ解析群5%(P=0.39)と有意差は認めなかった。
腺腫もしくは大腸癌の検出は複雑性憩室炎で(10/141, 7.1%)有意差を認めなかった(P=0.85)。
単純性憩室炎でも、6.6%と同様の結果でした。
結論
憩室炎後の大腸内視鏡検査では、単純性憩室炎でも有意に検出率を高めるため、推奨される。