結論
- 心筋梗塞の輸血目標は、Hb8g/dlくらい
はじめに
輸血に関する研究はたくさんあります。
その中でも、特にICU領域ではHb7以上が目安となっていました。
一方慢性貧血では、Hb6以上が輸血目標とされていました。
心不全がある場合は、Hb8以上が1つの目安とされてきました。
今回の研究でも、Hb8以下で輸血されています。
そのため、ICU領域で一般的は、Hb7以上でよいというよりは、Hb8以上で良いという結果と言えます。
非劣勢研究
今回の研究は、非劣勢研究という手法が選択されています。
これは、標準的なものと比較して劣っていないことを調べる方法になります。
そのため、例えば今回の研究ではHb8とHb10で比較しています。
Hb10が標準だとすれば、今回新たにHb8目標でも各種評価項目で劣っていない事を調べる研究です。
ポイントは、差をつけるのが目標ではなく、劣っていないことを調べるというのが目標になります。
輸血の合併症
輸血はリスクベネフィットがあります。
なかなか人工の輸血というものは作れないようですので、人の血液から作られています。
例えば、以前はHIVのウインドウピリオドでの検出も問題となっていました。
現代では、その検査方法も精度が進んでいますので、ほとんど問題ないレベルであると言えます。
とはいえ、単純に他人の血液を自分の体に入れることになりますので、未知の感染症のリスクも伴います。
また、宗教上の理由から輸血が禁止されている場合もあります。
今回の研究~REALITY trial
はじめに
貧血を伴う急性心筋梗塞患者における、輸血目標は明らかではない。
目的
制限的輸血戦略が、臨床的影響に与える影響を非劣勢で検討すること。
方法
デザイン:オープンラベル、非劣勢、フランススペインの35施設、無作為化比較試験
対象:668症例の急性心筋梗塞で、ヘモグロビン値が7−10g/dl
期間:2016年3月〜2019年9月
介入
- 制限輸血群:Hb8g/dl(N=342)
- 介入なし群:Hb10g/dl(N=324)
を目標に輸血が行われた。
評価項目
主要評価項目はMACE(複合全死亡率、脳卒中、繰り返す心筋梗塞もしくは虚血による緊急再灌流療法)と呼ばれる、主要心血管イベントとされた。
結果
最終的に666症例が30日の追跡調査を完了し、解析が行われた。
平均77歳、281症例(42.2%)が女性であった。
- 制限輸血群342症例(323症例[35.7%]が輸血を受けた)
- 介入なし群324症例(323症例[99.7%]が輸血を受けた)
MACE
- 制限群で36症例(11%)
- 介入なし群で45症例(14%)
主要転帰の相対リスクは0.79(片側97.5%CI、0.00~1.19)であり、事前に規定された非劣性基準を満たしていた。
全死因死亡
- 制限群5.6%
- 介入なし群7.7%
心筋梗塞の再発
- 制限群2.1%
- 介入なし群3.1%
虚血による緊急再灌流
- 制限群1.5%
- 介入なし群1.9%
非致死的虚血性脳卒中
- 制限群0.6%
- 介入なし群0.6%
まとめ
急性心筋梗塞および貧血患者において、制限的輸血戦略と自由輸血戦略を比較すると、30日後のMACEの発生率は非劣っていた。