Contents
入院中の発熱の原因 7つのD
- 偽痛風
- 深部静脈血栓症
- 薬剤
- デバイス
- 抗菌薬関連腸炎(クロストリディオイディスディフィシル感染症)
- 深部膿瘍
- 褥瘡
症状
ゲシュタルト(見た目)
見逃される代表的な疾患だと思います
つまり、そこまで見た目が悪そうではないという場合が割とあります
膿瘍は、普通の感染症と比較して、時間をかけて成長していきますので、体がなれてしまっていることもあります
けれども、よくよく話を聞くと、体重が減少していたり、寝汗をかくようになったり、食欲がなくなってきたりしています
そのため、どんな症状があるのか、具体的に聞く必要があります
聞かなければ、患者さんは認識していない場合もあります
症状があれば、いつから発生しているのかを聞きます
その期間が長ければ、膿瘍の可能性も上がります
入院患者さんは、通常体温や脈拍など、毎日測定されますので、微熱があることには気づきますが、自宅で生活していた方は、気づいていないこともしばしばあります
そんな時に、寝汗が出るようになったとか、体重減少があったり、などの消耗するような所見があれば、膿瘍の可能性を考えてみても良いと思います
抗菌薬治療開始後の発熱
通常感染症は、治療により良くなるか、悪くなるかのどちらかです
抗菌薬治療開始後の判定は、通常72時間後に行います
例えば、尿路感染症や肺炎などが代表的な感染症ですね
抗菌薬治療して、翌日も発熱しているからと言って、普通あまり慌てることはありません
発熱以外の全身状態が悪くなっているようであれば、抗菌薬が効いていない可能性を考えます
抗菌薬治療開始72時間経過しても、発熱が改善しない場合は7Dの検索とともに、膿瘍の可能性を疑う必要があります
入院時におこなった、造影CTで膿瘍の指摘がなくても、入院後に膿瘍形成する場合もあります
抗菌薬治療開始後の治療効果が乏しい場合に考慮すべきこと
- その抗菌薬そもそも効いているのか?
- 膿瘍の可能性はないか?
- 投与ルート(経口 OR 経静脈)の問題?
- 投与量の問題?
- 抗菌薬に応じた、投与間隔の問題?
- 腎機能に比して、投与量が少ない可能性は?
- 国際的な抗菌薬投与量に準拠しているか?(日本の添付文書は少ない場合が多い)
- いわゆる7Dのような、他の熱や炎症源はないか?
診断に有用な検査
- 赤沈(血沈/ESR)
- 造影CT
赤沈は、血液沈降速度の事で60分で何ミリ沈下するかを見る検査です
通常、ESRは過去2週間程度の炎症を反映します
そのため、慢性炎症を来す病気でESRは亢進します
感染症でESRが亢進する代表的疾患
- 結核
- 感染性心内膜炎
- 膿瘍
感染症以外では、自己免疫疾患でも同じく慢性炎症なので亢進します
治療
- ドレナージ
- 抗菌薬
通常感染症の治療は?と聞かれると、抗菌薬と回答する方が多いです
しかし、最も重要なのは、ドレナージやデブリードメントなどの、Source control(原因への介入)です
治療期間は、通常膿瘍消失までです
目安としては、最低4−6週間の治療が必要となります
ほかには、ESRが下がり止まるまで、CRPが陰性化するまでなど、臨床的にはいくつかの目安があります
ドレナージの利点
- Source control
- 原因菌の同定
膿瘍の場合は、菌の塊ですので、通常抗菌薬だけでの治療では太刀打ちできない場合が多いです
手術に耐えられない全身状態の場合などは、抗菌薬だけで治療することもあります
近年は放射線科による、穿刺ドレナージも多く行われていますので、積極的に介入しやすくなってきています
菌の同定は、血液培養などで検出された菌をターゲットに行います
けれども、血液培養が陰性の場合や、特に膿瘍の場合は複数菌が関与している可能性もありますので、直接膿瘍をドレナージした際の細菌をターゲットに抗菌薬治療を行います
ナースが行う身体所見
腸腰筋という場所は、膿瘍形成しやすい場所として有名です
そんなときは、両足を伸ばせるかという所見を見ましょう
さらに追加の所見を取る場合は、腸腰筋徴候(Psoar's sign)を見ます
腸腰筋徴候は、側臥位になってもらい、足を後ろ側に反らせる検査です
痛みが誘発されれば、陽性ですので、腸腰筋膿瘍の可能性が上がります
まとめ
- 抗菌薬治療後72時間経過しても、治療反応性が悪い場合は膿瘍の可能性を考えましょう
- 膿瘍形成には時間を要しますので、入院前の病歴をきちんと聴取しましょう