総合診療内科 診療科

入院中の発熱7つの原因:褥瘡

入院中の発熱の原因 7つのD

  1. 偽痛風
  2. 深部静脈血栓症
  3. 薬剤
  4. デバイス
  5. 抗菌薬関連腸炎(クロストリディオイディスディフィシル感染症)
  6. 深部膿瘍
  7. 褥瘡

入院中の発熱:褥瘡

症状

入院中に謎の熱を出すことが多いです

レントゲンで肺炎なし、尿検査もきれい、血液検査で肝胆道系酵素上昇もない
「んー何が原因の熱だろうね・・」ということになりがちな、熱源です

スボンを下げて、おしりを見ないといけないので、見るのが面倒で見逃されやすいということもあると思います

以前高度救命救急センターに紹介した患者さんが、造影CTを撮影されましたが、何もありませんでしたと帰って来たことがありました

CTを見直すと、大きな褥瘡がCTで写っていました

高度救命救急センターが悪いわけではなく、それほど見逃される可能性が高い熱の原因という事です


4大感染症の1つです
実は、発熱の原因で、皮膚・軟部組織感染症は多いです

皮膚軟部組織感染症はSSTI(Skin and soft tissue infection)とも呼ばれます

たとえば、水虫などが原因でよく起こる蜂窩織炎もSSTIの1つです

4大感染症

  1. 肺炎
  2. 尿路感染症
  3. 肝胆道系感染(胆嚢炎・胆管炎など)
  4. 皮膚軟部組織感染症(褥瘡など)

SSTIを見つけるためには

褥瘡は、Pressure ulcerとも呼ばれます
直訳すると、”圧がかかるところにできる潰瘍”です

やはり、仙骨部がダントツで多いです
特に高齢者で、るい痩があり、栄養状態が不良な場合で、自力で体を動かすのも難しい状態(いわゆる寝たきり)の方では、多いです

とにかく、仙骨部は意識しないと見えない部分ですので、面倒がらずに見ることにつきます

そこで、圧痕で消失しない持続性の発赤や皮膚の損傷があれば、褥瘡です

発熱をきたしている褥瘡であれば、炎症を伴いますので、表皮(皮膚)の損傷は確実にあると思われます

皮膚だけの問題なのか、膿瘍を伴うものなのか

皮膚〜脂肪組織までの層の事を、 蜂窩織と総称します
その部分に起こる炎症は、蜂窩織炎です
筋膜までは炎症が起きません、筋膜の炎症は筋膜炎です

人食いバクテリアで有名な、壊死性筋膜炎が有名ですね
筋膜炎は、緊急手術が通常考慮されます
今回は詳しく説明しませんが、LRNECスコアという、筋膜炎の可能性がどのくらいあるかというスコアリングも使用します

蜂窩織炎の問題は、見た目だけではわからないということです

つまり、皮下膿瘍なのか、筋膜炎なのかはわからないということです

皮下膿瘍でしたら、超音波(エコー)でわかります
筋膜炎の場合は、エコーでもわかりませんので、全身状態が悪い場合や、痛みが強い場合は常に念頭に置くべき病気です

蜂窩織炎は、皮膚の炎症も伴いますので、皮膚を触ると痛みが誘発されます

診察でも特に靴下を履いている場合は、見逃さされがちですので、靴下を脱がせて診察しましょう

褥瘡の予防

体位変換も有用とされています
通常2時間毎に行われますが、それは普通のベッドでの話です

病院で使用されているような、体圧分散マットでは、4時間おきでも褥瘡の発症に関与しないとされています

とはいえ、日中覚醒している状態では、基本的にどんどん動かした方がよいです
逆に、夜間はしっかり眠れるように、体位交換の間隔を延長するなど、配慮が必要です

熱とは関係ないので、少しだけ触れますが、夜間の不眠はせん妄の原因にもなりますので、夜間はしっかり寝てもらう努力を行う必要があります

治療

感染徴候があれば、デブリードメントや抗菌薬治療も行われます

予防につきるのですが、栄養状態など必ずしも、看護ケアの影響だけでは解決できない場合もありますので、栄養やアクティビティなど、介入可能ものにはきちんと対応する

早期に発見し、褥瘡ができてしまったら、それ以上悪くしないように全力で対応する、というごく一般的な結論に達します

陰圧閉鎖療法なども、見た目は治療している感じが出ますが、結局は予防していればそんな大事にならずに済んだはずなのです

まとめ

  • 発熱の原因は、皮膚軟部組織も多い
  • 皮膚軟部組織感染症をみたら、より深部(膿瘍や筋膜)の可能性がないか考えよう
  • 靴下やズボンは面倒ですが、ちゃんと見ましょう

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